2016年03月25日
社会・生活
研究員
木下 紗江
流行の花柄パンツに挑戦してみるが、パジャマにしか見えない。一方、総務課の女子はおしゃれに着こなし、アフター5に繰り出していく... 。これは、人気漫画「人は見た目が100パーセント」(大久保ヒロミ・講談社)の一コマである。主人公は某製紙会社に勤務する理系の女性研究者3人。おしゃれに人一倍興味があるのに、どうも様にならない...。この漫画に象徴されるように、最近は「リケジョ」が主人公を務める漫画やドラマが増えている。
©大久保ヒロミ/講談社
「リケジョ」という言葉は、2010年に講談社で造られた登録商標である。同社が運営する無料会員制ウェブサイトRikejo(http://www.rikejo.jp/)の二宮進悟プロデューサーらによると、「理系女性は人数が少ないが故に、仕事上の困難を抱えているだろうと考え、親しみを込めて彼女たちを呼ぶ言葉を造ろうと思った」という。当時、歴史好きの女性を指す「レキジョ」が流行していたため、「リケジョ」が浮かんできたようだ。
講談社の二宮進悟さん(左)、矢部純代さん(中央)、宮崎智大さん(右)
文部科学省の調査によると、大卒者全体に占める理系女子の比率は過去20年間で5%から10%に倍増したが、まだ理系男子の半分にも届かない。リケジョ人口の拡大は急務であり、政府も今年1月に閣議決定した「第5期科学技術基本計画」の中で、新規採用する自然科学系研究者の3割を女性にする目標を打ち出した。
(出所)文部科学省「学校基本調査」
(注) 理系は、理学・工学・農学・保健(医歯薬看護を含む)の合計
国立のお茶の水女子大学と奈良女子大学は2014年に共同教育プログラム「理系女性教育開発共同機構」を創設し、理系女性のリーダーやグローバル人材の育成に取り組んでいる。リケジョの裾野を広げるため、「セミの羽化の観察」(幼稚園児)、「お茶大カップ ミニ四駆女子大会」(小中高校生)、各界で活躍中のリケジョが集まる「未来シンポジウム」(中高大学生)など、多彩なイベントを開催する。
小川温子副機構長(お茶の水女子大学副学長)は、「幼少期から理科に興味を持ってもらい、理系女性が色んな分野で活躍している姿を見てほしい」と強調する。その上で、「育児制度など社会的なインフラも整い始めており、ますます良くなるだろうから、理系女子には思う存分、力を発揮してほしい」と話す。
小川温子副機構長(お茶の水女子大学副学長)
また、講談社では社会貢献と市場創出の観点から、前述した専門サイトRikejoを開設。理系に関心を持つ中高生向けの進路相談や、企業や大学との共同イベントを通じ、リケジョを増やそうと躍起になっている。プロジェクトマネージャーの矢部純代さんは、「初めは理系に進学したいと考えても、途中であきらめる人が少なくない。例えば、親が『リケジョでは婚期が遅れてしまう』と心配するから...」という。
Rikejoをのぞいてみると、アイシャドウなど化粧品の研究員、ロボット用モーターの設計者、地方自治体の土木職、テレビで活躍するお天気キャスター...。こうした各界で活躍する女性を続々とり上げ、リケジョの楽しさや魅力を伝えている。
実は、筆者もリケジョの一人である。小学生の時、自宅の裏山でタヌキやキツネを見つけたり、竹の子を掘ったりしていた。自然の中で遊ぶうちに、いつの間にかリケジョになっていた。小学校の卒業アルバムでは、「理科クラブ」のメンバーとして笑顔で写っている。理系の醍醐味は自分の五感をフル活用しながら、体験と思考を繰り返すことにある。そして、おしゃれな着こなしでも、文系女子に負けないぞ!?
木下 紗江